boaterはユーザーの本音で作った法人向けITサービス活用ガイド

  • TOP
  • 特集記事
  • 営業せずに1,100社に導入された理由。業務管理のboard

営業せずに1,100社に導入された理由。業務管理のboard

2018.03.05 Mon

その他

Velc田向社長_board

目次

ヴェルク株式会社 代表取締役の田向祐介さんにお話を伺いました。

boardは請求書作成・見積書発行等ができる中小企業・ベンチャー向けクラウド型の業務システムです。単なる書類作成支援だけでなく、経営管理の観点で周辺業務を効率化できることを目指しています。

ヴェルク社はboardで1,100社の導入企業を持ちながらも、受託開発や他サービスの開発にも力を入れている会社です。営業が一人もいないのに、それだけの導入実績をどう築き上げてきたのかを知りたくてお話を伺ってきました。

 

課題解決のために生まれたboard

――本日はよろしくお願いします。まず、boardをなぜ始めたのか教えていただけないでしょうか。

経営の観点では、受託開発と自社サービスを両立していこうと考えました。ヴェルクでは、人数を増やして規模で稼ぐよりも、「10人で10倍の利益を稼ぐ方法を考える」という労働集約型ではない考えを大事にしています。

人数を増やすと人のマネジメントコストが増えるので、そこに時間を費やすよりは開発業務に集中したいという思いがあります。少ない人数でしっかり稼ぐには、受託開発だけでは限界がありますので、ストック型で稼ぐことができる自社サービスの開発を考えました。

ただし、boardは自社サービスを立ち上げようとして始めたサービスではありません。元々、他の請求書作成サービスを使おうとして一通りのサービスを触ってみたのですが、特に、業務管理・経営管理という点で自分が求めるものではなかったため、自社のために作り始めたのがきっかけです。

それが、知り合いの社長仲間の中でも同じような課題があることがわかり、かつ、自分自身が強みを有している領域だったため、本格的にサービス化することにしました。

弊社は大きな会社ではないので、「強みを活かせる」という点は大事にしています。ヴェルクでは請求書等の業務は経営者である私が担当してきたので、業務を理解していますし、こうやればもっと効率化できるのに、という思いも活かせます。

また、過去に在籍した企業(ITコンサルティングのフューチャーアーキテクト株式会社等)や受託開発では「業務課題の解決」を強みにして取り組んできましたので、この領域で課題解決の手法が活かせるだろうと考えました。

board概要

boardは書類作成だけでなく業務管理や分析・予測まで支援

 

――boardはどのような顧客に広がっているのでしょうか?

boardは自社業務の経験に基づいて開発しているので、立ち上げ初期は受託型の企業と相性がよいと考えていました。それで最初の1, 2年ほどは「受託特化型サービス」と呼んで普及を目指しました。実際、顧客の6~7割はシステム開発等を受託するIT系の企業でした。

ただし、指摘を受けて他業界でも受託型の企業は多いと気づきましたので、その後は受託特化型サービスとは呼んでいません。実際、いまではIT系企業の割合は3割程度であり、他の業界が増えています。例えば、工務店やリフォーム会社等の建築関係、会計事務所・法律事務所等の士業、印刷会社や製造会社などの受託型企業の導入が増えています。

 

サービスの思想や世界観への共感を醸成する

――受託型が多いにしても約3年半で1,100社導入は圧巻です。どのように普及が進んだのでしょうか。

ヴェルクには営業担当者はいませんし、広告も行っていません。現在は口コミやインターネット検索流入などからの成約がほとんどです。2017年くらいから何もしなくとも、毎月一定数の新規ユーザーが獲得できるようになりました。

 

――自然流入で成約とはなんとも理想的です。この流れはどのような仕組みがあってできたのでしょうか?

明確にこれだと特定できている訳ではありませんが、一つにはサービスの思想や世界観への共感があると考えています。

boardは顧客業務の課題解決の手段として位置付けていますので、一つの細かいタスクができる・できないではなく、boardを使うことで業務がどのように変わるのか、「変わる体験の実現」を重視しています。顧客要望を受けて機能を実装する際には、機能をただつけるのではなく、顧客が要望する背景にある課題をこれでしっかり解決できるのか、吟味してから仕様を定義し開発しています。

このように課題に対する機能のフィット感や深さを大事にしていますので、導入検討時に機能を一覧表にして、機能の有無を確認することに少し違和感があります。稟議用に必要なことはわかりますが、機能有無の○×は勝手に一人歩きして判断の尺度になってしまうことがありますので、安易に機能一覧で説明せずに、どれだけ課題解決できるのか、それによりどれだけ体験が変わるのかを伝えることを重視しています。

また、board開発当初は、「経営者の心理的負担を減らすサービス」と言っていました。boardを活用して請求業務が何時間分か効率化されたとしても、小さい会社にとっては経営に大きなインパクトを与えるとは限りません。しかし、経営者にとっての請求業務や数字の管理は、作業時間の大小にかかわらず、誰にも迷惑をかけずにきっちりやらなければならないというプレッシャーが月末・月初ごとに発生するものです。このストレスは経営に影響を与えますので、ストレスを緩和することには大きな価値があると考えます。

 

――経営者の心配事を減らすのはまさに課題解決ですね。

boardは使えば使うほど良さがわかるサービスなので、じっくり使用したユーザーから「本当によく考えられていますね!」と言われるのは何より嬉しいです。リリース当初はサービスのよさをどう伝えるか言語化に悩みましたが、最近のユーザーから聞こえてくる声として「この機能があるから使いました」は全くなく、「居心地が良いから使っています」という声が増えています。

業務システムは毎日利用するシステムなので、「前向きな気持ちで取り組める」ことが重要です。そのためにデザインや操作性にもこだわって開発することで前向きな気持ちで居心地よく使っていただくのを目指しています。

 

baord画面イメージ

boardのダッシュボード。売上達成率など経営者向け機能を備える

 

board見積書登録

必要機能とシンプルさを両立(画面は見積書登録)

 

――boardのキャッチコピーの「バックオフィス業務のために起業したのではない」は思想を表現した言葉でしょうか?

これは、バックオフィス業務で苦悩していた私の心の叫びです。会社を経営していると、月末・月初は納品や請求に伴う書類作業で多くの時間を取られてしまいます。できるだけ開発業務という本業に集中したいのにやらざるを得ない、そんな、同じような悩みを持つ経営者に向けたメッセージです。

このキャッチコピーは仮だったのですが、顧客からの反応が良かったので今でも使い続けています。顧客企業がある程度の規模になると経営者ではなく、経理担当者がユーザーになりますが、今でもインパクトのある言葉になっているようです。

 

社長が時間を惜しまずに顧客サポートに全力を注ぐ

――boardは問合せ対応にも力を入れており、問合せを受けてから最初の回答までに要する時間の中央値がわずか4分(2018年2月の数値)という資料を拝見しました。驚異的な数字ですが、なぜここまでこだわるのでしょうか?

弊社は小さい会社ですので、始めた当初は、戦える所がここしかないと認識したためです。力を入れるには自分がやればできる所だというのもあります。

システムを導入しただけでは効果が生まれませんので、いかに正しく使うかが重要です。その支援を問合せ対応で行っています。

正しい答えをすぐに回答することも大切ですし、顧客にとって本当に必要なことを伝えるのも大切です。例えば、自分たちの業務のやり方を変えずに、無理やりboardを使おうとしているケースがあれば、顧客のやり方がそこまで必要ですか、と伝えるようにしています。

 

――そこまでされると、ただのサポート対応ではなく、コンサルティング対応の要素も含まれますね。

boardはなるべく理解して正しく使ってほしいので、マニュアル対応だけで完結しようとは考えていません。受託開発時とマニュアル対応の中間くらいのイメージです。

もちろん対応時間はかかりますが、上手く使えずに解約されるリスクの低減にも、満足された顧客からの口コミ伝搬にもつながりますので、時間をかけてよいものだと考えています。中には事細かく頻繁に質問される顧客もいますが、それだけ熱心にサービスを使おうとしてくれているので、問合せ内容や回数に制限を設ける考えもありません。

 

――問合せ対応は、最初は全て田向さんが、いまでも一部は対応されているとのことですが、直接担当されるメリットはありますか?

もちろんあります。問合せ対応は問題の温度感の把握や、ユーザーニーズを拾い上げる機会だと考えています。

問合せ対応を直接行わずに問合せ内容一覧だけみても、問合せの背景や深刻さが掴めないので、どれが重要かわかりません。

また、「傾向の把握」も直接対応のメリットです。boardが様々な業界に普及していく中で、この業界のユーザーは、同じようなことを問い合わせくる、ということがわかれば、その業界を意識した機能改善やサポートを行うことができます。

 

自らを律し、課題解決の深堀に邁進する

――「開発ロードマップ」を公開するという珍しい取り組みをされていますが、この狙いは何でしょうか?

開発ロードマップを始めたきっかけは、初期のユーザーからの要望でした。これがいつできるようになるか知りたい、とのことだったので、当面の開発予定を開発ロードマップとして公開しました。

この評判がよかったので現在も継続しています。業界や業務のやり方が様々ある状況では、ユーザーがほしいと思う機能を全て実装するのは現実的ではありません。そのかわり、この機能はいつまでに実現ということをお見せすることで、機能実現まで待っていただけるようにしています。

また、別の側面では、自分へのプレッシャーにもなります(笑)。 受託開発とは違って、自社サービスはいくらでも期限を延ばすことができます。しかし、受託開発で忙しいから機能開発を遅らせるというのはユーザー本位ではありませんので、期限を設けています。

 

――最後に、今後の展望を教えていただけないでしょうか?

課題解決をさらに深めていきたいと考えます。導入企業が増えているとはいえ、ニーズがある企業の数からしたらまだまだ一部ですし、既存ユーザーに対してもまだまだ課題解決できていない箇所が多く存在します。受託開発業務では顧客のやりたいことや予算に制約されてしまいますが、自社サービスはそのような制約がありませんので、深めることを突き詰めていきたいと考えています。

また、会社の経営面では、「エンジニアが今後も食べていけるようにスキルをアップデートする」環境を継続的に構築していきたいです。技術の進化が加速しているので、その分技術の陳腐化が早く、エンジニアは過去のスキルだけでは食べていけません。スキルの継続的アップデートは不可欠です。

そのためには、収益を安定させて、自分自身を含めエンジニアへの教育に投資できるようにしなければなりません。目の前のことに振りまわされずに教育を受ける機会がある、その場を作るのが経営者だと考えています。

 

――本日はありがとうございました。

 

所感

サービスを拡大させ、企業規模を拡大させることを優先するスタートアップとは異なり、顧客の課題解決にひたすらじっくり向き合い、深め、突き詰めることを何よりも優先されています。顧客にとってやるべきことを追求していったからこその成果だと言えばそうなのですが、確固たる信念がないと誰もここまではできないでしょう。本質に向き合えばファンが自然とついてくる、という基本原理の偉大さを強く感じたインタビューでした。

 

サービス紹介サイト

board

 

このページの内容をシェアする

  • Facebook
  • LINE
  • Twitter