事業承継マッチング支援サイト比較9選!選び方を紹介
最終更新⽇:2024-10-08
「事業を受け継いでしてほしい」「事業を継承したい」などお考えの方へ。マッチング支援サイトの仕組み・利用法、メリット、更に選び方・比較ポイントなどをわかりやすく紹介しています。
目次
事業承継マッチング支援サイトとは
事業承継支援サイトとは、オンラインサービスを活用して「事業を継いでほしい」と考える中小企業や小規模事業と、「事業を受け継ぎたい」と考える利用者をマッチングさせるサービスのことです。
事業承継を行いたい利用者は、自身の希望条件に沿った企業を検索し、ニーズに合った企業を探すことができます。
事業承継とM&Aの違い
事業承継とは、現在の企業の経営者が引退して事業を後継者に引き継ぐことを指します。経営者の子供や親族に引き継ぐ「親族内承継」や、企業に所属している従業員や役員に引き継ぐ「親族外承継」があります。一方、M&Aは「Mergers(合併)」と「Acquisitions(買収)」の頭文字を取った言葉で、文字通り合併や買収を通じて事業を引き継ぐことを意味しています。
かつて、中小企業の事業承継は、親族や従業員に後を継がせる「親族内承継」「親族外承継」が大半でしたが、近年は後継者不足や経営戦略としての事業譲渡の浸透から、M&Aで外部に会社や事業を譲渡する事例も増えています。その点では、M&Aも事業承継のイチ手法と言っていいでしょう。
事業承継マッチング支援サイトの仕組み・利用法
事業を譲り渡す側、事業を譲り受ける側それぞれの立場から、どのように事業承継マッチング支援サイトを利用していくかを解説していきます。
<事業を譲渡する側>
- 事業継承マッチング支援サイトに自社の詳細な情報を登録
- 譲渡条件やポイントなどを記載(基本的には匿名がほとんど)
- 買い手からのオファーを受信
- オファーを受けたら企業調査してサイト上で具体的に交渉
- 条件がまとまればマッチング成立
事業を譲渡したい企業は、まずサイトに業種や年商、従業員数など自社情報、譲渡金額やタイミングなどを登録していきます。オファーを受けたら、必要に応じてデューデリジェンスを実施。交渉は1社独占は少なく、並行して検討を行い、譲渡先を決めていくことになります。
<事業を譲り受ける側>
- 事業承継マッチング支援サイトに登録
- 規模・業種・エリアなど希望条件を登録
- 希望条件に合致する案件を検索し、合致するものがあればオファーを送信
- 交渉を行い、条件がまとまればマッチング成立
事業を譲り受ける側は、マッチング支援サイトに登録後、希望条件に合った案件がないかを検索します。希望する案件があればオファーをかけますが、アドバイザー等を活用して案件を提案してもらうこともあります。
なお、マッチング支援サイトはあくまでもマッチングが目的のため、その後正式に契約するかは自己責任になるので注意しましょう。企業の価値やリスクを調査するためには念入りにデューディリジェンスを行うことが必要です。そのための知見に乏しければ、マッチング支援サイトに専門家の紹介を依頼するという手もあります。
事業承継マッチング支援サイトの利用料について
サイトの利用料は譲渡する側(売り手)は無料であることがほとんどです。一方で事業を譲り受ける側(買い手)は料金が細かく設定されています。
登録や条件に合った案件への申し込みまでは無料ですが、成約時に成約金額の何%かを手数料として支払うことが多いです。手数料率はサイトによって異なります。一般的なものであれば2%〜3%くらい。中には5%の手数料が設定されているサイトもあります。
その他、「TRANBI」のようにプランごとに月額料金が設定されているものもあります。プランによって売却希望価格の上限が決められていますが、その分成約手数料が取られないなどのメリットがあります。
事業承継マッチング支援サイトのメリット
従来、事業を譲渡するためには事業を引き継いでくれそうな人材を自力で探すか、もしくは専門の仲介会社に依頼するのが一般的です。また事業を譲り受ける側も、同様に自力or仲介会社を利用して案件を探す必要があります。
それらに比べると、事業承継マッチング支援サイトを利用すると以下のようなメリットが見込めます。
<事業を譲渡する側>
- 広く買い手を募ることができる
- 売却価格の上昇が期待できる(複数社競合など)
- 事業承継にかかるコストを削減できる
マッチング支援サイトを活用すると、サイトに登録している多くの買い手に対して、幅広く自社をアピールできます。複数のオファーをもらうようなことがあれば、結果的に事業の売却価格の上昇も期待できます。
また、従来のやり方では、事業を承継するために多くのリソースがかかってしまい、結果として「廃業につながってしまう」「雇用していた従業員の職が失われてしまう」というリスクもありましたが、マッチング支援サイトなら大幅にコスト削減が望めることから、事業や雇用継続への期待も上がります。
<事業を譲り受ける側>
- 自社ではリーチできない候補先が見つかる
- 売り手に直接コンタクトできる
- 安価で利用できる
事業を譲り受ける側もサイトを通じて、希望に合うものを随時検索可能。より良い条件のものはすぐに手をつけられてしまうことも多いですが、条件を上手く設定しておけば自社では到底探し出せないような候補先に巡り合うこともできるはず。更に売り手とサイト上で直接連絡・交渉できるため、仲介会社を利用するのに比べると、スムーズなやりとりが期待できます。
また、マッチング支援サイトの場合、安価に事業を譲り受けられるのもメリットの一つです。たとえば、サービス利用料は承継する事業額の何%かを手数料として支払うのが一般的ですが、その額も従来の仲介会社に支払う登録料や成功報酬に比べると遥かに安価です。
事業承継マッチング支援サイトの選び方
自社に合ったマッチング支援サイトを選ぶためには、「案件の規模感・業種がマッチしているか」を確認することが大切です。サイトによって、登録されている案件数や譲り受け企業の登録数、更に業種などが異なり、大きく分けると3つに大別できます。
- 主な事業承継マッチング支援サイト(中大規模案件に強み)
- 主な事業承継マッチング支援サイト(様々な規模の案件に対応)
- 主な事業承継マッチング支援サイト(小規模の後継者募集案件に強み)
以下、各々の特徴やどのような場合が当てはまるかを説明していますので、自社に適したタイプはどれか確認してみましょう。また、記事後半に各タイプ別におすすめのサイトも紹介していますので参考にしてください。
主な事業承継マッチング支援サイト(中大規模案件に強み)
手軽に「事業買収を行いたい」「短期間で売り抜けたい」と考えている場合は、中大規模案件に強みを持つマッチング支援サイトがおすすめです。
たとえば、「M&Aサクシード」では、売上高が1億円以上の案件をメインに扱っており、10億円を超えている案件もあります。譲り受け企業の登録社数は10,000社以上あり、譲渡案件数は4,000件弱。年収10億円を超えている企業が7割近くを占めています。
主な事業承継マッチング支援サイト(様々な規模の案件に対応)
規模感に捉われず、案件によって事業承継を、スピード感を持って対応したい場合は、様々な規模の案件に対応ができるマッチング支援サイトがおすすめです。
このタイプは、売上高100万円〜数億円規模まで、あらゆる案件がサイトに登録されています。なおサイトによって、得意な業種には違いがあるため、事前に登録実績や成約実績をきちんと確認しておくことが大切です。加えてサイトには成功事例も紹介されているため、自社が探している案件と近い案件はないかを確認すると良いでしょう。
<掲載案件数・会員数>
サイト名 | 掲載案件数 | 会員数 |
---|---|---|
BATONZ | 23,000件 | 24万人以上 |
スピードM&A | 3,800件以上 | 20,000人以上 |
TRANBI | 2,000件以上 | 18,500人以上 |
M&Aクラウド | 10,000件 | 約8,000人 |
(2024年10月時点)
主な事業承継マッチング支援サイト(小規模の後継者募集案件に強み)
従業員が9名以下で行っている事業で後継者を探している、もしくは事業承継をしたいと考えている場合など、小規模の後継者募集案件に強みを持つマッチング支援サイトです。
案件数は少ないものの、中大規模案件にはない実名公開案件やプロのライターによる魅力がわかりやすい文面の作成など、事業価値をアピールする独自サービスが多いのが特徴です。たとえば、日本政策金融公庫の「事業承継マッチング支援」は、小規模事業者向けのサイトになっており、50件以上の実名掲載譲渡案件が記載されています。小規模事業者で事業の後継者がいないなどのニーズを最大限サポートしてくれます。
事業承継マッチング支援サイトの比較ポイント
最後に、自社に合ったマッチング支援サイトを探す上で、重要となりそうなポイントについてです。わかりやすいように「事業を譲渡する側」「事業を譲り受ける側」の2つに分けていくつか紹介します。
<事業を譲渡する側>
募集内容の作成代行サービスがあるか
マッチング支援サイトには数多くの案件が掲載されるため、他との差別化を図るには条件だけでなく「なぜその事業を承継させたいのか」などの想いも伝わると優位です。サイトによってはプロのライターが取材をして、想いを文章にしてくれるものもあります。数値化が難しい部分にもこだわりがある場合は、そういったサービスを利用するようにしましょう。
たとえば、「M&Aクラウド」では、ライターによるオンライン取材、もしくは現地取材を通して得た生の情報を約3,000文字の「事業ストーリー」としてサイトに掲載するサービスを展開しています。事業への想いや理念、魅力などは文章に加えて画像や動画なども利用できるため、オリジナル性の高いアピールが行えます。
<事業を譲り受ける側>
サイトが実名公開に対応しているか、どれくらい案件あるか
匿名による案件が多い中、実名公開に対応しているサイトもあります。当然ですが匿名よりも実名の方が情報の正確性も高く、またサイト外でも情報を集めやすいため、企業価値を判断しやすいなどのメリットがあります。
小規模の後継者募集案件に強みを持つサイトは、実名公開の案件を豊富に揃えています。たとえば、「relay」は、誰がどんな想いでやってきた事業かをコンセプトに実名公開の案件を100件以上取り揃えています。
事業承継だけでなく、資金調達にも対応しているか
承継した事業を発展させていくためには資金調達も重要です。マッチングサイトの中には、譲り受けた事業への資金調達が可能なものもあります。戦略として資金調達が一番にあり、良い案件があれば買収を含めて検討をしたいという場合には、資金調達にも対応しているサイトを利用するのがおすすめです。
たとえば、「M&Aクラウド」は、無料で利用できるアドバイザーのサポートを受けながら、出資企業とのマッチングも行えます。マッチングした出資企業と成約することで、資金調達ができ、買収した事業の推進に活用できます。
主な事業承継マッチング支援サイト(中大規模案件に強み)
M&Aサクシード(株式会社M&Aサクシード)
(出所:M&Aサクシード公式Webサイト)
審査を通過した法人企業のみが利用できるマッチング支援サイト。譲渡案件数は4,000件弱、譲り受け起業登録社数は10,000社以上あり、本気で事業承継を考えている企業のみと直接やりとりが可能。2022年の実績では半年以内の成約が57%、最短37日とスピード感を持って進められるのも魅力。料金は完全成功報酬制を採用しており、成約するまでは無料でサービスを利用可能。譲り受け側は成約時に、成約価格の2%を手数料として支払う。
- 料金:譲受企業/譲渡金額の2%(最低金額200万円)、譲渡企業/無料
主な事業承継マッチング支援サイト(様々な規模の案件に対応)
BATONZ(株式会社バトンズ)
(出所:BATONZ公式Webサイト)
成約数、会員数が国内最大級の規模を誇るマッチング支援サイト。譲渡案件数は23,000件を超えており、毎月新規案件が800件以上登録される中から条件に合ったものを検索可能。登録会員数は24万以上で、成約までの期間は平均3カ月。専門のスタッフが支援してくれるサポート体制も完備。譲受企業は買収ニーズを登録すれば、非公開案件の提案を受け取ることもできる。
- 料金:譲受企業/譲渡金額の2%(最低金額35万円)、譲渡企業/無料
スピードM&A(株式会社日本経営研究所)
(出所:スピードM&A公式Webサイト)
100万円の小規模案件から50億円超えの大規模案件まで様々な規模・業種の案件が掲載されたマッチング支援サイト。案件数は3,800件以上、登録数は20,000人超。ユーザー同士のやりとりをプライベートチャットでスムーズに行うことができ、案件で悩んだ際にはM&Aコンサルタントが無料でサポートしてくれるのも心強い。
- 料金:譲受企業/譲渡金額の1.5%〜5%(最低金額20万円〜)、譲渡企業/無料
TRANBI(株式会社トランビ)
(出所:TRANBI公式Webサイト)
譲渡案件2,000件超、譲受企業600弱、登録会員数18万5,000人以上を誇る日本最大級のマッチング支援サイトの一つ。成約手数料ではなく、売却希望価格に応じた3つの月額定額プランが用意されており、成約件数にも制限がない。初めての事業承継にも対応できるように、eラーニングコンテンツも充実。M&A以外にも、業務提供先の検索や副業人材のマッチングサービスも用意。
- 料金:譲受企業/月額3,980円〜、譲渡企業/無料
M&Aクラウド(株式会社M&Aクラウド)
(出所:M&Aクラウド公式Webサイト)
事業承継の案件だけでなく、資金調達先を探すこともできるマッチング支援サイト。事業譲渡側だけでなく、譲受企業も「どのような事業承継案件を希望しているのか」というニーズを公開可能なため、双方向のアプローチが期待できる。譲渡案件は2,700社・10,000件、譲受企業は約8,0000人が登録。プロのアドバイザー相談や売却情報の入力代行も無料で行えるのも魅力。
- 料金:譲受企業/完全成功報酬制(540万円/件)、譲渡企業/無料
SMART(株式会社ストライク)
(出所:SMART公式Webサイト)
厳選した案件のみ・適正評価で掲載されているため、安心して利用できるのがポイント。たとえば、事業承継の要望があったらすぐに掲載に応じるのではなく、経営状況に関する資料を提出してもらった上で、同社の公認会計士、弁護士を含む専門チームが過去1000件以上の企業評価に基づき分析・評価を行った上で掲載するため信頼性が高い。プラットフォームのほか、長年運用されているメールマガジンの配信を通じてマッチングの可能性を広げられるのも心強い。
- 料金:譲受企業/要問合せ、譲渡企業/無料
主な事業承継マッチング支援サイト(小規模の後継者募集案件に強み)
事業承継マッチング支援(日本政策金融公庫)
(出所:事業承継マッチング支援公式Webサイト)
小規模事業者向けに運営されているマッチング支援サイト。譲渡側、譲り受け側の双方とも無料で利用ができ、登録内容に基づいて、日本公庫の専門担当者がマッチング候補を探す仕組み。マッチングした相手と交渉に進む際も面談場所や日時の調整などを担当者が代行してくれるので手間がかからない。譲渡案件1,200件超、譲り受け企業20万社が登録されており、約60件の実名公開案件も登録されている。
- 料金:譲受企業・譲渡企業/無料
relay(株式会社ライトライト)
(出所:relay公式Webサイト)
実名公開案件を基本としているマッチング支援サイト。案件数は500件弱程だが、プロのライターが取材を通して、事業の内容や魅力について伝えるサービスを無料で展開しているのが強み。たとえ地方で行っている小規模の事業でも、地域のプレイヤーと連携しながらネットワークを築き、全国から問い合わせを募り、「共感」を軸にした事業承継を可能にする。
- 料金:譲受企業/月額3,980円※成約手数料は要問い合わせ、譲渡企業/無料
ビズマ(株式会社ビジネスマーケット)
(出所:ビズマ公式Webサイト)
地域密着型マッチング支援サイト。地方自治体や地域金融機関との連携を密接に行い、地方の小規模の会社であっても支援ができる体制を構築。更に専門スタッフが承継に向けて「売上拡大」「ファイナンスサポート」「コスト削減」のサポートを行ってくれる。インターネットの活用が難しい事業者に対してはオフラインの支援も可能。
- 料金:要問い合わせ
まとめ
事業承継マッチング支援サイトを利用することで、従来の仲介会社や自力での事業承継よりも効率的に広く案件を募ることができます。また、サイト上で直接やり取りも行えるため、実際に事業承継に至るまでの期間も短縮可能です。
近年、高齢化や労働人口の不足、更に地域過疎化などにより、企業の事業承継のニーズは増しています。それに伴い、マッチング支援サイトの数も増えてきていますが、どこでもいいからサイトに登録しさえすればいいというものではありません。サイトによって特徴・強みとする部分は異なります。
まず、希望する規模感・業種の案件を、より多く取り扱っているマッチング支援サイトを選び、その上で譲り受ける側であれば「どのような条件の案件を承継したいと考えているのか」、譲り渡す側なら「事業にどのような魅力があるのか」を考え、伝えていくようにしましょう。