年末調整代行サービス比較8選。費用やできること、注意点は?
最終更新⽇:2024-07-29
年末調整に関わる業務負担を軽減したい経理部門の方へ。年末調整にまつわる様々な課題の解決に役立つ年末調整代行サービスについて、費用相場や注意点、タイプ別の選び方、比較ポイントなどとともに、おすすめのサービスを紹介します。
目次
年末調整代行サービスとは?
年末調整代行サービスとは、企業が毎年12月頃に実施する年末調整の業務を代行してくれるサービスのことです。
年末調整は、毎月の給与計算で算出している概算の源泉所得税を計算し直す作業です。生命保険や住宅ローンといった各種控除を考慮し、源泉所得税の過不足に応じて追加徴収あるいは還付することになります。
1月1日から12月31日に支払われた給与を基準にするため、毎年12月頃に年末調整をすることが一般的です。そのため、経理部門は12月頃の業務負担が大幅に増える傾向に。こうした課題の打ち手になるのが、年末調整代行サービスです。年末調整に関わる業務を代行してくれるため、一時的に発生する作業負担や残業代の削減につなげられます。
また、年末調整には所得税法や地方税法、各種社会保険法など複数の法律が関連します。仮に法改正があった場合には、年末調整の記載内容や提出事項が変わることも。限られた期間に実施する作業となるため、ルールの変更を把握しきれていなかったり、対応できなかったりするとトラブルに発展しかねません。
年末調整代行サービスでは、専門のスタッフが実務を行うケースが多く、法改正への対応もカバーしてくれるため安心です。社内の限られた人員で実施する年末調整と異なり、計算ミスや法改正のキャッチアップもれといったヒューマンエラーの削減も期待できます。
年末調整代行サービスでできること
年末調整代行サービスでは、主に以下の作業を代行しています。
システムへのデータ入力(連携) | 年末調整に必要な事業所や従業員情報について、自社の人事労務システムや代行サービスが提供するシステムへの入力・連携作業を代行。年末調整の準備段階からサポートするため、負担軽減効果が大きい |
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対象者の確定 | 従業員のなかから年末調整の対象者を確定し、それぞれに対して告知・案内を進めるためのメールアドレスを収集。社員への個別対応が不要となり、自社内での取りまとめの手間なく進められる |
年末調整の案内と書類の回収 | 対象となる従業員に対して年末調整に必要な申告書類の案内や、各種の控除証明書の原本回収を代行してくれるサービスも |
申告内容の読み取り・確認・訂正 | 従業員から提出された証明書を読み取り、データ化する工程を代行。サービスによってはAI OCRや手作業、またはその併用でチェックするなど、ヒューマンエラーを極力なくす体制を構築 |
申告データの納品 | 年末調整に必要なデータの整備、システムに反映できる形式への加工、最終的な申告データの納品までを請け負う。納品されたデータを利用するだけで年末調整を済ませられるため、経理部門の負担を大幅に軽減する |
年末調整代行サービスの費用相場
年末調整代行サービスは、利用人数や対応範囲に応じて費用に幅があります。費用計算は多くのサービスにおいて、「サービス基本利用料」「年末調整対象者一人当たりに発生する従量制の利用料」「オプションサービスによる追加費用」で構成されています。
以下、料金を公開しているサービスをまとめました。費用の目安として参考にしてください。
サービス名 | 料金 | 対応範囲 |
---|---|---|
日本アウトソーシングセンター | 最大1,200円/人 ※スタンダードプランの場合 |
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「経理・記帳代行サポートオフィス」 | 基本料金20,000円/回+2,000円~/人 ※1~10人の場合 |
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どこまでの作業を代行してもらうかによって費用が異なったり、オプション費用が発生したりするため、具体的な業務内容を踏まえて試算したり、実際に見積もりをもらって比較したりするのがおすすめです。
年末調整代行サービスの注意点
年末調整代行サービスを利用するうえで、注意すべき点をまとめています。
1.税理士や社労士への年末調整の依頼
税理士には独占業務が存在し、「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」が挙げられます。年末調整に関わる業務のなかには、「税務書類の作成」「税務相談」に含まれているものもあり、原則的に税理士以外が行うと違法に。税理士ではなく社労士に年末調整を依頼したとしても、年末調整のすべての処理ができないため注意が必要です。
ただし、年末調整に必要な書類の回収やチェック、書類のデータ化といった業務は税理士の独占業務にはあたりません。年末調整代行サービスを利用する際は、どの業務を依頼するか明確にし、税理士が介在する業務は誰が担当するのかを把握しておく必要があります。
なお、社労士については、年末調整に必要な給与または社会保険料の算定や、書類をチェックするなど、税理士の独占業務に該当しない業務であれば対応しても問題ありません。
2.各種証明書の原本確認
年末調整の際、各種控除証明書を提出する必要があることが所得税法に明記されていますが、これらの書類は電子データではなく、原則紙の原本を提出する決まりがあります。これは、電子化されたデータは電子署名や電子証明書の要件を満たさないとされているからです。
そのため、年末調整代行サービスを利用する際にも、従業員から証明書の原本を回収しなければなりません。法令上の要件のため、多くのサービスで原本確認に関する内容は明確にされていますが、証明書原本の回収方法がサービス内容に組み込まれているか、社内で取りまとめる必要があるのかをあらかじめ確認しておきましょう。
3.サービス申し込みの時期
年末調整の処理業務は主に12月に実施しますが、多くのサービスで申し込み期限が7月末までといった、半年近く前から動き出す必要があります。これはサービス利用にあたって、必要な情報の取りまとめや従業員のメールアドレスの収集といった準備が必要となるためです。
実際には、7月に申し込んだ後に準備を経て10月からサービスを開始する、といったスケジュールを組み立てることになります。年末が近くなってからサービスを検討しても間に合わないため、事前に導入を議論して準備を進めておくことが重要です。
年末調整代行サービスのタイプ別の選び方
年末調整代行サービスは大きく3つのタイプに分類できます。自社の運用に適したタイプを検討するとよいでしょう。
1.専用システムを提供するタイプ
独自のシステムを活用して、そのシステム上で従業員がそれぞれデータ入力や書類をアップロードするタイプです。利用するシステムが決まっており、申請手順もシンプルなため、年末調整業務全体をスムーズに依頼・導入したい場合に適しています。
たとえば、NTTビジネスソリューションズでは、指定サービス上に年末調整に必要な証明書類を写真に撮ってアップロードし、扶養関係は簡単な質問に回答するだけで申請を進められるように。「Mominoki」はMominokiクラウドのアカウントを従業員ごとに登録し、情報の入力や証明書の読み取りを実施できます。
2.Webシステムの運用代行をするタイプ
各種Webシステムの運用を代行しながら、年末調整業務を進めてくれるタイプです。利用するシステムがあらかじめ決まっているサービスのほか、システムの提案から請け負ってくれるサービスもあります。
たとえば、日本アウトソーシングセンターでは、人事労務クラウドシステム「オフィスステーション」にて運用。PC、スマホ、タブレット端末などのマルチデバイスで、時間や場所を選ばず提出できるように。
NMPスペシャリストは、自社に適したWeb申告システムの提案からスタートするため、これからWeb申告に切り替えたい場合にも有用です。
3.部分導入に強みのあるタイプ
「年末調整の申告書・証明書のチェック」「データ入力」など、年末調整業務の一部を切り取り、アウトソーシングできるタイプです。ピンポイントに業務人員が必要な場合、こちらのタイプが適しています。
たとえばBODでは、年末調整業務の準備からデータ納品までの全工程はもちろん、一部の業務内容のみを代行するなど、柔軟な対応が魅力。フルキャストでも年末調整業務の前工程・本工程・後工程の委託内容がカスタマイズでき、システムの導入なしでサービスを受けられる点がメリットです。
キュービーファイブでは年末調整アウトソーシングに加え、申告書の書き方のほか、あらゆる問い合わせに対応する「年末調整チャットボット」も提供。従業員は知りたいタイミングですぐに回答が得られ、担当者は問い合わせ対応の削減につなげられるため、社内業務の効率化が期待できます。
年末調整代行サービスの比較ポイント
年末調整代行サービスのタイプを理解したうえで、導入時のポイントとして以下の点を意識して比較すると、サービス選びがスムーズになります。
1.サービス対応範囲
申告内容のチェックや従業員からの問い合わせ対応など、依頼したい業務をカバーしているか確認しておきましょう。依頼したい内容が基本サービスに含まれているのか、オプション対応となるのかで費用面にも差が出てきます。
また、申告書の発送やファイリングといった、紙ベースの書類を扱う工程の取り扱いがあるかも確認しておくと、社内での業務負担軽減につなげられます。
たとえば、BODなら、Web年末調整と書面運用の年末調整、またはその併用運用が選択でき、委託内容も全工程から一部工程の選択まで幅広く対応しています。
2.対応規模
年末調整の対象人数が多い場合は、検討しているサービスが大規模対応しているのか、反対に少人数の組織の場合は一人からでも手軽に使えるかなど、対応している規模を確認しておきましょう。
たとえば、「Mominoki」は、概ね1,000人以上の従業員を持つ企業の年末調整業務を念頭に置いて設計。NTTビジネスソリューションズでは、9,999人までは料金表をもとに対応しており、10,000人以上となる場合は個別相談に応じています。かたや「経理・記帳代行サポートオフィス」は、50~1,000人までを想定しており、小規模で一人から対応することも可能です。
3.運用方法の柔軟性
会社の規模や従業員の年齢層によって、効率のよい方法が異なる場合があります。Webによる年末調整だけでなく、「紙での実施にも対応しているか」「申請や情報の入力はスマホでも対応可能になっているか」など、運用の柔軟性を確認しておくとよいでしょう。スムーズな運用が期待できる方法が選べると、導入時の説明にかかる負担も軽減されます。
たとえば、NTTビジネスソリューションズは、自社のフローにあわせて運用方法をカスタマイズできます。
おすすめの年末調整代行サービス(専用システムを提供)
年末調整業務アウトソーシング(NTTビジネスソリューションズ株式会社)
(出所:年末調整業務アウトソーシング公式Webサイト)
NTTグループをはじめとする32万人の利用実績がある年末調整アウトソーシングサービス。従業員数や業種を問わず対応しており、指定サービス利用の場合はスマホで申請書類を撮影し、送信するだけで年末調整を進められるので、作業工数の大幅な削減に貢献する。
申請内容の確認や社員への訂正依頼を代行してくれるので、社内業務の手間とミスを減らせる。自社の業務仕様やアウトソーシングしたい箇所を、個別にカスタマイズできる点も魅力だ。7月末頃までの申し込みで利用でき、サービスの開始は10月からとなっている。
- 料金:要問い合わせ
Mominoki(ラクラス株式会社)
(出所:Mominoki公式Webサイト)
年次業務を行う人材の確保を解決する、年末調整クラウド+BPOサービス。対象従業員が1,000人以上で、拠点が多い大企業の利用を想定した機能とサービスが充実している。証明書原本の収集から読み取り、申告データ作成までBPOで代行。AI、OCR、人間の目視を組み合わせることで高速かつ正確な読み取りを実現する。
紙の申告書にも対応しており、コンタクトセンター設置によって従業員からの問い合わせにも対応してくれる。企業グループ全体での利用を想定し、管理者権限、進捗閲覧権限、責任者権限などを担当者ごとに設定できる点も便利だ。利用については8月末までに契約し、準備を進めていく想定となっている。
- 料金:要問い合わせ
おすすめの年末調整代行サービス(Webシステムの運用代行)
年末調整サービス(株式会社日本アウトソーシングセンター)
(出所:年末調整サービス公式Webサイト)
紙の作業が不要で、担当者の窓口業務からの脱却が期待できる年末調整アウトソーシングサービス。人事労務クラウドソフト「オフィスステーション」をベースとして運用しており、年末調整対象者はPC、スマホ、タブレット端末などのマルチデバイスから、いつでも・どこからでも提出が可能だ。
前年度の年末調整情報を事前に取り込めるため、余計な入力を削減するといった入力業務の簡略化が特徴。控除対象の自動判定や控除額の自動計算にも対応している。総務担当者は業務申告状況をパーセンテージ表示で確認でき、収集状況をリアルタイムで把握できる点も魅力だ。サービス導入にあたっては7~9月で契約を行い、10月からの運用開始が基本となっている。
- 料金:最大1,200円/人(スタンダードプランの場合)
年末調整代行サービス(株式会社NMPスペシャリスト)
(出所:年末調整代行サービス公式Webサイト)
スタートアップ企業から10,000人を超える大手企業まで、従業員数を問わずに対応する年末調整代行サービス。Web申告と紙による申告の両方をカバー。Web申告の場合は自社に適したWeb申告システムの提案からスタートし、企業ごとの環境にあわせた最適解を提示してくれる。紙の申告からWebに切り替えたい場合にもおすすめだ。年末調整業務は事前準備から検査、納品まで一連の経理手続きを任せられ、担当者がコア業務に専念できる体制づくりにも役立つ。申し込みは、原則7月末頃までにて締め切りを設けている。
- 料金:要問い合わせ
経理・記帳代行サポートオフィス(株式会社YFPクレアコンサルティング)
(出所:経理・記帳代行サポートオフィス公式Webサイト)
70名を超える税理士法人YFPクレア・YFPクレア社労士事務所との提携が特徴の年末調整代行サービス。50~1,000人までの従業員数を想定しているが、一人からの申し込みにも対応。給与計算代行サービスと併用すれば、年末調整代行は基本料金が不要となり、ワンストップで利用可能だ。
クラウド会計freee、MFクラウド会計、弥生オンラインといったクラウド会計ソフトや、クラウド給与計算ソフト、クラウド版の勤怠管理システムなども対応しており、自社で利用しているシステムをそのまま活用できるのも強み。原則、夏頃までに問い合わせをし、秋に打ち合わせすることで万全の準備が行える。遅くとも10月頃までの問い合わせがおすすめ。
- 料金:基本料金20,000円/回+2,000円~/人(1~10人の場合)
おすすめの年末調整代行サービス(部分導入に強み)
年末調整代行サービス(株式会社BOD)
(出所:年末調整代行サービス公式Webサイト)
総合アウトソーシング企業BODが提供する年末調整代行サービス。Webでの運用や書面での運用のほか、Webと書面の併用運用にも対応している。年末調整業務の準備となる「前工程」、申告書の回収やデータ入力を行う「本工程」、データ加工やファイリングを実施する「後工程」のすべての代行から、一部の業務のみ切り取った代行まで柔軟に応じる。コールセンターの設置により、従業員への督促や不備連絡の代行もスムーズに。電話・メール・システムのチャット機能といったチャネルも豊富に用意されている。
- 料金:要問い合わせ
年末調整代行サービス(株式会社フルキャスト)
(出所:年末調整代行サービス公式Webサイト)
人材派遣・人材紹介企業のフルキャストが提供する年末調整業務のBPOサービス。フルキャストの人材サービス・BPOサービスで取引している企業に対して多くの利用実績があり、数百人規模から10,000人以上の大規模企業にも対応している。
申告書の回収方法は企業ごとのやり方にあわせられ、Web申告と紙の申告の両方をカバー。システム導入の必要がなく、希望のフォーマットでデータを受け取れる。前工程・本工程・後工程の委託内容はカスタマイズできるので、予算や業務量を踏まえたうえでの活用がしやすい。最短3週間で代行業務開始を実現するスピード感も特徴だ。
- 料金:要問い合わせ
年末調整アウトソーシング(株式会社キュービーファイブ)
(出所:年末調整アウトソーシング公式Webサイト)
人事・給与計算のフルアウトソーシングを手掛ける、キュービーファイブの年末調整アウトソーシングサービス。年末調整業務のスポット代行を中心に行い、年末調整期間の作業場所やスタッフの手配、年末調整書類の印刷・発送にかかる資材の確保まですべて代行。年末調整の業務人員の手配や教育、作業管理、納品まで委託できるのが強みだ。
年末調整専用コールセンターを開設しており、従業員からの問い合わせにもスタッフが柔軟に対応してくれる。また、関連サービスとして「年末調整チャットボット」も提供。社内での書類記載手順や問い合わせなどに自動で対応するため、社内業務を効率化し、担当者のコア業務への注力も後押しする。
- 料金:要問い合わせ
まとめ
年末調整に関わる業務のアウトソーシングを提供する、年末調整代行サービスを紹介しました。年末調整代行サービスの導入により、一時的に発生する業務負荷を軽減させるとともに、最新の法律に則した適切かつ正確なサービスを受けられます。
以下、よくある質問をまとめておきましたので、参考にしてください。
年末調整代行サービスの注意点は?
年末調整代行サービスの利用を検討する際は、「依頼したい業務が税理士の独占業務にあたらないか」「各種証明書の原本回収はサービス内に含まれているか」「サービスの申込期限に間に合うか」などを考慮する必要があります。
以下、申込期限が公開されているサービスをまとめています。
NTTビジネスソリューションズ | 7月末頃 |
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「Mominoki」 | 8月末 |
日本アウトソーシングセンター | 7~9月 |
NMPスペシャリスト | 原則7月末頃 |
「経理・記帳代行サポートオフィス」 | 夏頃(遅くとも10月頃) |
年末調整代行サービスの費用は?
年末調整代行サービスの費用は、代行する領域や利用人数などによって大きく異なります。依頼したい業務や年末調整が必要な人数を整理し、見積もりをとってサービスを検討するのがおすすめです。
料金が公開されているサービスとして、日本アウトソーシングセンターでは最大1,200円/人、「経理・記帳代行サポートオフィス」は1~10人での利用の場合、基本料金20,000円/回+2,000円~/人となっています。