情報セキュリティ運用サービス比較10選。タイプ別の選び方を解説
最終更新⽇:2024-08-14
情報漏えいやサイバー攻撃対策を徹底し、社内セキュリティを強化するために、情報セキュリティ運用サービスを検討している方へ。ノウハウと人材を保有する専門サービスについて、概要やメリット、タイプ別の選び方、比較ポイントを解説します。
目次
情報セキュリティ運用サービスとは
情報セキュリティ運用サービスとは、各種システムやクラウドサービスの構築・運用・監視、情報漏えいリスク対策、ヘルプデスク対応など、企業に代わってセキュリティ関連業務を代行するサービスです。
情報漏えいや不正アクセス、マルウェア感染、自然災害による物理的損傷などのセキュリティリスクに備えるために、有効なセキュリティ対策も複雑化しています。そのため、社内セキュリティを強化するには、専門的な知識やノウハウが必要に。
こうした悪質なサイバー攻撃から企業を守るため、セキュリティ対策の策定と運用を主に行うのが情報セキュリティ運用サービスです。ただし、サービスによって提供メニューが異なるため、各社が対応可能な範囲を確認したうえで依頼する必要があります。
情報セキュリティサービスに依頼できること
システム設計の支援 | 技術的課題や運用上の課題など、企業が抱えるセキュリティ課題を洗い出し、システムの機能や処理に必要な要件策定を支援。そのうえで、最適な機器の提案など強固なセキュリティ対策の基盤となる部分を構築します |
---|---|
運用・監視 | システムの運用・監視を代行。24時間365日体制のサービスなら、営業時間外や夜間・休日の対応も可能に。リアルタイムで異常の検知・分析を行うため、突然の障害やサイバー攻撃などにも早急に対処できます |
ヘルプデスク | 社内ユーザーからのセキュリティに関する問い合わせに対応。ツール導入に伴うキッティングやリプレイス、各ソフトの設定変更や、運用時のバージョンアップ対応なども実施します。セキュリティ運用の統一による効率化やコスト削減も期待できます |
改善提案 | 監視運用状況に関する月次レポート作成や報告会を実施。稼働状況や作業履歴などをもとに問題点を洗い出し、改善策を提案します。新たな外部脅威の情報やセキュリティ上の問題をふまえて、具体的なアドバイスを提示し、セキュリティ対策の強化をサポートします |
情報セキュリティ運用サービスを利用するメリット
情報セキュリティ運用サービスを利用することで、主に以下のようなメリットが見込めます。
トラブル対処の迅速化 | サイバー攻撃による情報漏えいなど、緊急性の高いトラブルが起こった際に迅速に対応してもらえます。トラブル発生時以外も常に運用・監視が行われているため、素早い異常検知が可能に。24時間365日体制でのセキュリティ運用によって、二次被害のリスクも最小限に抑えられます |
---|---|
セキュリティ環境の最適化 | 情報セキュリティ運用に関する業務をトータルで任せられるため、社内の人的リソースや対策コストの最適化につながります。具体的には、情報システム担当者やエンジニアがコア業務に集中することで生産性を高めたり、IT資産の利用状況を把握してデバイス・アプリを整理したり、といったメリットが挙げられます |
セキュリティレベルの向上 | セキュリティに関するノウハウと専門知識を持ったエンジニアが在籍しているため、難しいトラブルへの対応が可能に。セキュリティ対策が徹底されることで、安全性も向上します。最新の攻撃を踏まえたうえでの対処や、インシデントの重要度に応じた通報・遮断などを、セキュリティの専門家が早急に行います |
情報セキュリティ運用サービスのタイプ別選び方
対応範囲や導入目的によって、情報セキュリティ運用サービスを3つのタイプに分類しました。
1.包括的にサポートするタイプ
【解決できる課題】
- 幅広いシステムのセキュリティ対策全般に備えたい
- 自社の要件に合わせて、プラン・サービス内容をカスタマイズしてほしい
- 最新のセキュリティ対策も取り入れたい
課題の把握からシステム設計の支援、運用、分析、改善提案などセキュリティ対策における業務フローをトータルで行うタイプ。カスタマイズ性が高く、最新のセキュリティ手法の活用にも積極的なサービスが多いのも特徴です。
たとえば、NRIセキュアテクノロジーズの「セキュリティ対策支援」は、先端技術や脅威に関する有識者と連携した上で、市場・製品の動向調査から製品選定、運用開始後の改善活動に至るまで総合的に対策支援を行います。
また、大企業向けのITコンサルティング会社アクセンチュアが提供する「サイバーセキュリティサービス」は、分業されることの多いリスク把握・戦略立案と実際のオペレーションを一気通貫ですべて自社対応できる点を強みとしています。
2.クラウド環境に特化したタイプ
【解決できる課題】
- 利用中のクラウドサービスに、組織のセキュリティポリシーを正しく適用したい
- クラウドサービスの設定ミスをなくしたい
- 各クラウドサービスのセキュリティ設定をきちんと把握したい
クラウド製品に絞って対策したい場合におすすめのタイプ。クラウドサービスの利用における設定ミスやセキュリティ事故を防いで、企業・組織のセキュリティ・ポリシーに則った安全な運用を支援します。
ネットワンシステムズの「クラウドセキュリティ運用支援サービス」は、複数のパブリッククラウド環境において企業のセキュリティー・ポリシーが適用されていることを監査。セキュリティリスクにつながる構成ミスやポリシー違反、クラウドワークロード上の脅威などを検知することができます。
SHIFTの「クラウド診断・監視」は、国際的なガイドライン「CISベンチマーク」に基づいた診断で、クラウドの利用状況や設定を分析し、監視設定の構築、運用サービスを提供します。
3.業種・業界に特化したタイプ
【解決できる課題】
- 自社システム環境の独自性・専門性を保った状態でセキュリティを強化したい
- セキュリティ強化と業務効率をトレードオフしたくない
工場や医療機関など特定の業種・業界に特化したセキュリティ運用サービスを提供しているタイプです。特定の業種・業界ならではのガイドラインに基づいたセキュリティ対策を実施したい場合に適しています。
たとえば、パナソニック ソリューションテクノロジーの「産業制御システム向けセキュリティソリューション」は、自社工場で培った知見を活かし、マルウェアや工場の特性に応じた、適切な対策を提供。セキュリティアナリストが工場の通信を分析し、ネットワーク異常やマルウェア侵入を検知し、被害範囲を特定します
「Ryobi-MediSec」は、機密性の高いデータを持つ医療機関に特有のセキュリティリスクに対応したセキュリティ運用サービスを提供しており、医療機関の規模に応じたサービスが用意されています。
また、「自動車部品業界向け情報セキュリティ対策支援サービス」は、自動車産業固有のサイバーセキュリティリスクを考慮して策定されたガイドラインに基づいて、経験豊富なスペシャリストが情報セキュリティ強化に向けた対策を推進します。
情報セキュリティ運用サービスの比較ポイント
情報セキュリティ運用サービスを比較する際には、料金や知名度だけでなく、自社に適したサービスが受けられるかどうかが大切です。以下の比較ポイントに留意しながら、比較検討を進めてください。
サービスの対応範囲
何をどこまでやって欲しいのか、外部に依頼したいセキュリティ運用の範囲によって、選ぶべきサービスが異なります。
たとえば、大企業において、リスク検知から戦略立案、ログ監視までを一気通貫で対応してもらうのであれば、分析から運用までを行うアクセンチュアの「サイバーセキュリティサービス」などがおすすめです。また、鉄道情報システムの「情報セキュリティ対策支援サービス」なら、標的型メール訓練、脆弱性診断などのラインナップも充実しており、全社的なリテラシー向上にも役立ちます。
一方で、自社のセキュリティ運用部門に足りない部分を補う形で依頼したいのであれば、目的や予算に合わせてメニューを組めるタイプがおすすめ。ネットワンシステムズの「クラウドセキュリティ運用支援サービス」では、「シンプル」「スタンダード」「アドバンスド」の3種類のプランを用意しています。
また、ヘルプデスク機能を重視するのであれば、神田通信機の「セキュリティ運用管理代行」やSCSKサービスウェアの「セキュリティ運用サービス」のように、アフターサポートやインシデント対応が充実したサービスが選択肢となります。
リスク対策の手法の範囲
どのような仕組み・手法でリスク対策に取り組んでいるのかも、セキュリティ運用サービスを選ぶうえで大切です。対応している手法が多いほど、多様なセキュリティニーズに応えられます。
たとえばNRIセキュアテクノロジーズの「セキュリティ対策支援」は、セキュリティ診断や各種セキュリティソリューション、マネージド・セキュリティーサービスなど、幅広い手法でセキュリティ対策を行います。
また、
「QT PRO マネージドセキュリティ」は、QTnetクラウドセキュリティ基盤を使用して監視機器のセキュリティログを収集。SIEMによる自動分析、セキュリティアナリストによる目視分析・危険度判定を行います。
自社に適した運用にカスタマイズできるか
セキュリティを徹底的に強化したいのか、利便性を重視するのかなど、対策の度合いは業種や企業の方針によって異なります。そのため、画一的なセキュリティ運用では、不要な機能があったり、特有のニーズに応えられなかったりする可能性も。
具体的な要望や状況に応じて、最適な形で運用できる体制を提案してもらえるかどうかも選ぶ際の目安のひとつです。
たとえば、鉄道情報システムの「情報セキュリティ対策支援サービス」は、ISMS対策方針に基づいた具体策をベースに、目的や予算、固有事情などを考慮し、各企業に最適化されたロードマップ案を策定します。
そのほか、自動車部品業界に特化した「自動車部品業界向け情報セキュリティ対策支援サービス」や、医療機関に特化した「Ryobi-MediSec」など、それぞれの業種が扱うデータの特徴に合わせた対策を提案しているサービスも。
情報セキュリティサービス基準に適合しているか
情報セキュリティ運用サービスの品質を見極めるうえで、情報セキュリティサービス基準に適合しているかどうかも比較ポイントのひとつです。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)では、「情報セキュリティサービス基準適合サービスリスト」を公開しています。このリストには、経済産業省が策定した「情報セキュリティサービス基準」をもとに、適合サービスや事業者が掲載されているため、掲載の有無からサービスの品質を推し量れます。
おすすめの情報セキュリティ運用サービス(包括的にサポートするタイプ)
セキュリティ対策支援(NRIセキュアテクノロジーズ株式会社)
(出所:セキュリティ対策支援公式Webサイト)
先進技術の導入に伴うセキュリティ対策強化に強みを持つサービス。特定製品に依存せず、中立的な視点で有識者との連携による現実的な対策計画を提案可能。
製品導入やセキュリティ対策の実施サポートのみでなく、導入前の市場調査から対応。導入後は活用状況の可視化、日々の運用課題抽出、改善点の取りまとめなども行う。海外拠点やベンダーを駆使し、企業が希望する対策範囲に応じて国内外を問わず最適な体制で支援する。
- 料金:要問い合わせ
サイバーセキュリティサービス(アクセンチュア株式会社)
(出所:サイバーセキュリティサービス公式Webサイト)
リスク把握・戦略立案から実際のオペレーションまで、全領域でサービスを提供する包括的セキュリティ運用サービス。ゼロトラストや予兆検知型監視など、最新のセキュリティ構造への移行支援も行う。
多様化するセキュリティニーズに対応できるよう、専門家や学術研究者、データサイエンティスト、アライアンスパートナーとの連携を強化。グローバル規模での情報セキュリティ運用サービスを提供できるのが大きな強み。
- 料金:要問い合わせ
情報セキュリティ対策支援サービス(鉄道情報システム株式会社)
(出所:情報セキュリティ対策支援サービス公式Webサイト)
目的、予算、固有事情を考慮したセキュリティ対策を提案し、実施をサポートするサービス。業務上の利便性とセキュリティ強化の最適なバランスを重視しているのが特徴。
保有する資産や情報セキュリティ対策の状況を把握したうえで、独自のスコアリングシステムをもとに分析。最適なシステム設計をゼロベースから支援する。設計段階から専門知識を持った人材が関わることで、トータルコストの大幅削減も実現。
- 料金:要問い合わせ
セキュリティ運用管理代行(神田通信機株式会社)
(出所:セキュリティ運用管理代行公式Webサイト)
専任管理者のいない企業に安心してネットワークを利用できる環境を提供する、月額課金型の総合セキュリティサービス。外部からの攻撃と内部からの漏えいに備えるセキュリティユニットの導入から運用管理までをトータルでサポートする。
ネットワーク障害への対応、実地とリモート両方での設備維持・保守サービス、システムに関する問い合わせ対応など、ハード・ソフト両面でのアフターサポートの手厚さが魅力。
- 料金:要問い合わせ
おすすめの情報セキュリティ運用サービス(クラウド環境に特化したタイプ)
クラウドセキュリティ運用支援サービス(ネットワンシステムズ株式会社)
(出所:クラウドセキュリティ運用支援サービス公式Webサイト)
クラウドセキュリティ製品により、パブリッククラウド(PaaS・IaaS・コンテナ)のリソースに対して、セキュリティリスクの検知や通知、設定修復、脆弱性可視化を行い、改善提案まで行う。
緊急を要する場面ではRemediation機能を利用し、あらかじめ登録されたコマンドを実行することで、直接クラウドサービスにログインすることなく修復対応を実施。プランに応じて、アラート詳細調査、ポリシーチューニング、ログ調査、報告会など、改善のための手厚いサービスが強み。
- 料金:月額87万4,000円〜、サービス導入作業50万円~(【基本メニュー】アドバンスド(報告会なし)の場合)
※参考価格のため、詳細は要問い合わせ
クラウド診断・監視(株式会社SHIFT)
(出所:クラウド診断・監視公式Webサイト)
国際的なガイドライン「CISベンチマーク」に基づいた診断で、クラウドの利用状況や設定を徹底分析。正しい設定とポリシーを継続して適用するための、監視設定の構築、運用、月次レポートの提出、問い合わせ対応までをワンストップで提供する。
コストと機能性のバランスに配慮した複数のプランが用意されているのが特徴。小規模なクラウド環境から分離された本番環境まで、幅広い規模に対応可能。
- 料金:要問い合わせ
QT PRO マネージドセキュリティ(株式会社QTnet)
(出所:QT PRO マネージドセキュリティ公式Webサイト)
必要な機能のみに絞ることで、コストを抑えたセキュリティ運用ができるクラウドサービス。監視・分析・通知を完全自動化した「ライト」と、アナリストによる人的監視と対策提示、緊急時にはリモートでの通信遮断にも対応した「フル」の2つのメニューから選択できる。
物理的損傷リスクを考慮して自社センター拠点2カ所にシステムを分散しているため、大規模災害発生時にもサービスを継続提供できるのが強み。
なお、サービスを利用するには、「QT PRO VLAN」「QT PRO エントリーVPN」の回線サービスを契約する必要がある。
- 料金:要問い合わせ ※セキュリティ運用管理なしの場合は月額52,000円~
おすすめの情報セキュリティ運用サービス(業種・業界に特化したタイプ)
産業制御システム向けセキュリティソリューション(パナソニック ソリューションテクノロジー株式会社)
(出所:産業制御システム向けセキュリティソリューション公式Webサイト)
パナソニックの工場で培ったノウハウを活かし、工場の産業制御システムセキュリティ運用を支援。脅威リスクの可視化から、対策の設計・監視、インシデント発生時の対応支援までを包括的にカバーする。
既存システムに影響を与えずに導入可能なネットワーク解析システムにより、セキュリティアナリストが通信をリアルタイムで遠隔監視。現場では気づきにくいネットワーク上の問題に対して、マルウェアや工場の特性に応じた適切な対策を提案する。
- 料金:要問い合わせ
Ryobi-MediSec(株式会社両備システムズ)
(出所:Ryobi-MediSec公式Webサイト)
機密性の高い医療データを持つ医療機関特有のセキュリティリスクに対応可能。PC10台未満の小さなクリニックから400床以上を有する大規模機関まで、規模に応じたサービスを用意している。
セキュリティリスク診断サービス、セキュリティ機器の導入・エンドポイント対策、SOCサービス、職員向けの教育・訓練サービスなど幅広い内容を提案。被害発生時の調査から復旧対応に至るまでの緊急時対応サービスや、サイバーセキュリティ保険も提供する。
- 料金:要問い合わせ
自動車部品業界向け情報セキュリティ対策支援サービス(株式会社ブロードバンドセキュリティ)
(出所:自動車部品業界向け情報セキュリティ対策支援サービス公式Webサイト)
ITセキュリティサービスに特化したセキュリティ専門企業が提供。自動車産業全体のサイバーセキュリティ対策のレベルアップを目的に作成された「自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドラインV2.0」に基づき、情報セキュリティ対策をサポートする。
ガイドラインに準拠したセキュリティポリシーや規程など、情報セキュリティ文書の整備を重視しているのが特徴。文書確認などのアセスメント終了後、対策ロードマップを作成し、年間を通じた情報セキュリティ対策支援を行う。
- 料金:要問い合わせ
まとめ
サイバー攻撃の種類や手口が多様化する中、社内人材のみでのセキュリティ運用には限界があります。情報セキュリティ対策を強化する方法のひとつが、社外の情報セキュリティ運用サービスの利用です。
情報セキュリティ運用サービスが提供する内容は、セキュリティシステム設計の支援だけでなく、夜間・休日を問わないリアルタイムでのログ監視、リスク検知、戦略立案や問い合わせ対応まで多岐にわたります。
サービスによって提供する内容や強みが異なるため、情報セキュリティ運用サービスを選ぶ際には、以下のタイプから自社に適したものを選んでみてください。
- 包括的にサポートするタイプ
- クラウド環境に特化したタイプ
- 業種・業界に特化したタイプ
最新の攻撃に対応できるセキュリティ対策には、専門家の知識やノウハウが必要です。セキュリティ運用を効果的に行いたいと考えているのであれば、情報セキュリティ運用サービスの利用がおすすめです。